
港区。
それは日本一金と欲望の渦巻く街。
…と、言いたいところだが、
「金」と「欲」でいったら日本一は歌舞伎町かもしれない。
うーむ………どっちだろう………。
「港区」と比べるなら歌舞伎町ではなく「新宿区」だし、それなら港区の方が…
…まあそんな話はどうでもいい。
俺は港区が好きだ。
金や欲に忠実な人間は魅力的で、
そんな人間が集まった場所が楽しくないはずがない。
港区には意味のわからない世界が広がっている。
一晩で数百、数千万もの金を使い遊ぶ金持ち達がそこら中にいる。
さすがにそのレベルに辿り着くのはまだ先の話だが、
多少なり金を持ち港区に住めば
港区の実態の端っこくらいは知ることができる。
わかりやすいものから話すなら、
「港区女子」
は実在する。
行ったことがある人ならわかると思うが、
六本木を歩けば10秒で「港区女子」を目にすることができる。
実は大して珍しいものでもない、本当にそこら辺を歩いている。
彼女等のプロ意識にはいつも驚かされる。
自分の顔、身体に何百、何千万もの金を投資し
とことん「美」を追求し自分の価値を高めている。
隣を歩くのはただのおっさんだ。
若い高身長イケメンを見かけることもあるが、
大抵はちょっと身なりの良いただのおっさんと歩いている。
俺はそんなおっさんを見るのも好きだ。
いや、決してそっちの気があるわけではない。
俺は女の子が大好きだ。
港区でなければ、おっさんなんて極力目に入れたくない生き物だ。
が、いずれ俺もおっさんになる。
23歳になったばかりとはいえ、
もう20代中盤に差し掛かっている。
「おっさん」はもうすぐ目の前にきている。
そうなったとき、ただのおっさんとして一生を終えるのはあまりにもつまらない。
武勇伝ばかり語る過去に捉われた典型的なおっさんになんてなりたくない。
どーせおっさんになるなら最高のおっさんになっていたい。
港区のおっさんは輝いている。
港区女子やパパ活といった概念は、
世間からは嫌われ、もちろん褒められたものではないだろう。
が、港区のおっさんは金を手にした。
金の力で、美を追求した最強の女性の隣を歩くことができている。
周りから白い目で見られることなんてわかりきっている。
それでも、金を稼ぎ、
「おっさんになってからでもかわいい女の子の隣を歩ける」
という男の夢を実現しているのだ。
やっていることは褒められたことではない。
しかし、自らの努力で夢を叶えている。
それも並大抵の努力ではない。
ピンキリではあるだろうが、かなりの金を手にしなければ隣を歩くことすら許されないだろう。
そんな姿を見ていたら、
「俺も頑張ろう」
と思える。
残酷なことに、おっさんという概念が刻々と近づいてきている。
俺があの年のおっさんになったとき、
同じだけの富を築くことはできているだろうか。
金と欲に忠実に、夢を叶えることは出来ているだろうか。
港区女子の隣を歩くおっさんに憧れるなど
女性読者にはバカかと思われるかもしれないが、
もし金の力で
「超絶イケメンアイドルを10人従えて王国の姫になれる」
と考えたら悪い気はしないだろう。
推しのアイドルグループがあるならそれを思い浮かべて欲しい。
そのアイドルグループと同棲し、もちろん家に女性は自分1人。
料理や洗濯も全て彼等がこなしてくれるし、
朝は優しく起こしてくれるし髪もとかしてドライヤーもかけてくれるしセットもしてくれる。
まるで王国の姫のような生活。
もし金を稼いでそれが実現するのだとしたら…
なんて考えると、
案外港区のおっさんもバカにはできない。
日比谷線六本木駅から出てすぐの2階にある
「ルノアール」
というカフェで作業をすることがある。
ルノアールに行く理由は「家から近い」「席がふかふか」の2点だが、
何より店内の人間模様が面白くて仕方ない。
客層は
・港区女子とおっさん(おじいちゃん)
・お父さん絶対反○だったでしょって家族連れ(お父さんの首元から和彫り?タトゥー?が見える)
・セミナーがどうこう話しているマ○チっぽい男性グループ
・スーツで投資か保険の営業かけてる奴といかにも騙されそうなおばさん
・絶対金持ちじゃんってオーラのあるおばあちゃん3~4人組
・普通に1人で作業している20~30代の若者
大体このあたり。
もう見ているだけで面白く、
今日どんな客いるかな~
おもしろい話聞こえてくるかな~
と、いつも楽しく席に座ってウインナーコーヒーを飲みながら作業している。
特に港区女子とおっさん(カフェだからかおじいちゃんの場合が多い)の会話を聞くと、
彼女等の相槌のうまさがよくわかる。
もちろん、ルノアールで見かけるレベルは
港区女子の中でもTOP層ではないのだが、
やはりその「聞き上手」っぷりは凄い。
「ありゃおじいちゃん喋るの楽しいだろうな…」
といつも思う。
そして帰り際になると、
おじいちゃんの元に秘書?カバン持ち?がやってきて
会計を済ませて外に出ていく。
きっとどこか大きな企業の社長か何かなのだろう。
おじいちゃんになっても、
大企業の社長レベルにまでなっても、
かわいい女の子に話を聞いてもらい。褒められたい。
そんな男の本質は変わらないのだ。
そんな人間模様を楽しめるので、
六本木を訪れることがあったら是非一度ルノアールに行ってほしい。
(ルノアールのトイレは外にあるけど、暗証番号がついてるので店員さんに番号聞いてから行こう。初めて行った時トイレのドア開かなくてテンパった)
学生時代、
「人間観察が趣味で~」
なんてキモいこと言う厨二病野郎が嫌いだったが、
もしかしたら彼も六本木ルノアールに通っていたのかもしれない。
それなら納得がいく。
話を戻す。
港区に住み金を使うと、
港区女子と会う機会も増える。
たとえば経営者数人と港区で飲んでいた時。
女の子と飲みたくない?となれば
ツテのある奴が港区女子に連絡を取り、
そんでその子が複数の友人をつれてやってくる。
初めて港区女子と出会った時は、
「うおおお…これが港区女子か…」
「やばい、何話したらいいんだろう…」
「帰りは絶対タクシー代あげなきゃ。タクシー代、タクシー代、タクシー代…」
と、謎に緊張してしまい上手く話すことすらできなかった。
こっちが慣れていないことなんか、あっちは一撃で見抜ける。
「こいつ使えねえな…」
と思われた瞬間、表面上は愛想よく会話してくれるが、
こちらの話にまるで興味がないのが伝わってくる。
無視されてないはずなのに、無視されているような感覚。
ちょっと金を手にして調子に乗っていた俺には
あまりにショッキングな出来事だった。
正直な話、俺も
「え~すご~い」
「かっこいい~」
と言われると思ってしまっていた。
21~22の時点でも毎月数百万は稼いでいたのだ。
「俺が話せばみんな興味津々間違いなしだぜ~」
なんて思っていた俺がバカだった。
冷静に考えて、そりゃ興味を持たれなくて当たり前なのだ。
俺はちょっと小銭を稼いだだけ、見た目も実年齢もただの大学生。
それに比べて彼女等が普段関わっている層は
10億100億規模の経営者ばかり。
どう考えてもこんな奴に興味なんて持つはずがない。
「こいつ金になんねえな…」
「関わっても人脈広がることもねえだろうな…」
と思われて当然。
フルシカトされなかっただけありがたいと思った方がいい。
初めて港区飲みに参加し、港区女子に会い、
そんな仕打ちを食らったものだから、
その日は人生史上最高に落ち込んだ。
メンタルお化けの自分がここまで落ち込んだのはこれが最初で最後かもしれない。
あまりの素行の悪さに実家を追い出された日も
志望校全部落ちでFラン大学に行くことが確定した日も
運用していたTwitterアカウントが全部まとめて凍結した日も
「ま、こんなもんっしょ~」
「人生なんとかなるっしょ~」
くらいにしか思わなかった自分が、
自信に満ち溢れたメンタルを木っ端みじんに破壊され
3日は布団から出られなかった。
もう飲み会はいいや…
俺には無理な世界だったわ…
と、二度と身の丈に合わない世界には足を踏み入れないことを誓った。
…が、まあ3日も経てば案の定メンタルは回復する。
もし俺に才能があったとするなら
この無敵に近いメンタルと、圧倒的なメンタルの回復速度だろう。
あの子達バカかわいかったな…
次会う時は絶対落としてやるぜ…
と密かに闘志を燃やし、
次港区女子に会えるかもしれないとなった日には、
前日からトークテーマを複数洗い出しておき、
「いかに彼女等に魅力的だと思ってもらうか」
だけを考え徹底的に準備してから飲み会に臨んだ。
「俺こんな事業やってて~」
「インフルエンサーの○○ちゃんと仕事して~」
「○日で〇万売り上げたことあって~」
もう喋れるだけの話を喋りまくった。
これでもかってくらいに自分をPRすることに全てを注いだ。
………敗北。
その日、人生2度目の敗北を味わった。
俺は前回から一体何を学んだのだろう。
そもそも俺は土俵にすら立てていないのだ。
彼女等が普段関わる相手は10億、100億クラスの経営者だ。
同じ土俵で張り合えるわけがないじゃないか。
失敗からは数多くのことを学べる。
人は挑戦した数だけ失敗し、失敗した数だけ成長する。
失敗するのは良いことだ。
失敗しすぐに立ち直ったことも良いことだ。
でも、失敗から正しく学ばなければ
また同じ失敗を繰り返すだけだ。
そもそも戦略から間違っていた。
凄いと思われたいと考えていたが、彼女等にとって俺は凄くない。
なら前提から見直す必要がある。
彼女等に相手をされるには、どうしたら良いのだろうか。
彼女等はどんな男性を魅力的に感じるのだろうか。
金がある奴?
それが一番手っ取り早いが、まだそこで勝負するには弱すぎる。
人脈がある奴?
それは強力な武器になるだろう。
が、俺にそんな人脈はない。
正直人脈作りに関しては完全な勉強不足だし、今のところ武器にできる自信もない。
であれば、残されているのは「差別化」しかない。
「こいつ他の男とは違うな」
そう思わせる"何か"ができれば
魅力がなくとも興味を持たれる、
興味は持たれなくとも仲良くはなれる。
差別化できるポイントを考えまくった結果、
「話を聞くだけに徹底してみるのはどうか?」
という結論に至った。
港区女子は相槌がうまい。
1回目、2回目の俺のように
どうにか自分を魅力的に見せたがる男にも
うま~く相槌を打って気持ちよく喋らせるプロだ。
であれば、今度は俺は喋らない。
男は自分語りばかりして
彼女達は聞くに徹している。
なら、他の男とは全く逆のことをするまでだ。
正直、これがうまくいく確率は低い。
自分のことすら自信を持って話せない男が
魅力的に見えるはずがないし、
こいつ喋れねーつまんねー奴。
と思われて終わる可能性のが高い。
けれど、港区女子の中にも
「私の話を聞いてほしい!」
と思っている層が一定数いるかもしれない。
ちょうど彼氏にフラれたとか、
大事にしていた物を失くしたとか、
偶然誰かに愚痴りたい気分の女子もいるかもしれない。
そのわずかな可能性に賭けて、
3回目は自分語りは封印。
何か聞かれても最低限の情報しか喋らず、
逆に自分から彼女等に質問しまくった。
いきなりプライベートにずかずか干渉するのはまずいと思ったので
聞くのは彼女等本人の情報ではなく、
彼女等の周りで巻き起こるエピソードから。
彼女等は金持ち達と関わり、
ありえんほどに人生経験が豊富だが、
話を聞く機会に恵まれてはいるものの
入ってくる情報量に対して、話をする機会、その情報を誰かに共有する機会はごくわずか。
彼女等が聞き上手なもんだから、ついつい男は自分語りばかりしてしまう。
魅力的だと思ってもらうため、自分を大きく見せることばかりに必死になる。
でも、本当は彼女達も話を聞いてほしいのではないか。
男の自慢話なんて聞いてて楽しいはずがない。
彼女達だって自慢もしたいし、愚痴や悩みを誰かに共有し共感してもらいたいのではないか。
というか港区女子かどうかに限らず、人間誰でもそうだろう。
だから他の男とは逆をやった。
聞き上手な彼女等相手に、聞き上手に徹した。
質問と共感を徹底し、
彼女等を「楽しませる側」から「楽しむ側」へと変えようと努力した。
この戦略は思いのほかうまくいった。
もちろん最初は
「別に彼氏に愚痴れてるからお前に喋る必要ねえよ」
「なんでこいつ質問ばっかしてくんだキモイな」
と心の中では思われていたかもしれない。
が、質問をしていくうちに
段々と心が打ち解けていくのがわかった。
「こいつと話している時間楽しかった」
そう思ってもらえたら勝ちだ。
港区で飲むような経営者と比べたら自分はカス以下の存在でしかないが、
金や人脈という点で魅力的な要素は全くないが、
それでも彼女達と仲良くなり、この日初めて生きた連絡先を手にすることができた。
実際、彼女達の話は興味深いものばかりだったし、
必死に自分を大きく見せようとするよりよっぽど楽しく会話することができた。
これは男としての「格」を捨てた戦略であり、
恋愛強者から見れば悪手なのは間違いない。
ナンパ界隈からはコテンパンに叩かれるだろう。
だが、そもそも「自分を大きく見せたい」なんて考えが浅はかだったのだ。
見栄を張ってもボロが出るだけだ。
かわいい女の子を前にしたら、誰しも自分を良く見せようとする。
しかし、かわいい女の子にとってはそんなもん見飽きている。
自慢話ばかりする男に騙され興味を持つなんて絶対にありえない。
競合と差別化する。
1人だけ周りとは違ったことをする。
これが上手く転ぶかは状況次第だが、
良くも悪くも印象には残るし、
良い方に転べば仮に実力が足りずとも結果を出せる。
いわゆる弱者の戦略だが、
弱者から抜け出すまではこれが最適解だ。
強者と同じ土俵で戦おうとするから負ける。
弱者の戦略でも何でもいいから
まずは挑戦し結果を出し経験を積み、
それを繰り返しているうちに気づいたら強者側に立っている。
持たざる者が高みを目指すならそれ以外に道はない。
これは余談だが、
港区女子の話を聞いていると
いわゆるテレビで見るような大物が実はこんな人間だったとか、
アイドルの○○と女子アナの○○が不倫関係にあるとか、
人気インフルエンサーが裏でこんなことやらかしてるかとか、
そんな裏話も知ることができる。
残念ながらテレビは一切見ないので芸能系の話はほぼわからないが、
聞く人が聞けばかなり面白いかもしれない。
さらにグレーな話でいうなら
某大学の某サークルが実はこの犯〇グループと繋がってて~とか、
最近消えた某インフルエンサーは実は薬〇が原因で~とか、
乱○パーティ主催してるのが某大手企業の社長だった~とか、
そんな話も耳に入る。
正直、そんな危険な世界には関わりたくないので
これからも適度な距離感で港区生活を満喫しようと思う。
まだまだ港区関連で面白い話はたくさんあるので
それはまた別の機会に。
おわり。