
俺は運が良かった。
生まれ落ちたのは日本で上位1%には入るであろう金持ち家系。
家は親が祖父から結婚祝いに買い与えられた高級マンション。
親戚のピアニストがきたときのために家にはグランドピアノが置いてあり、
ピアノ、バイオリン、絵画などの習い事を幼少期から叩き込まれ、
小学生時代もよく家に家庭教師がきた。
才能、教育、人脈、資産、
全てに恵まれ、将来が約束された人生。
何の不自由もなく大人になり、
約束された成功と幸福を手にする。
…はずだった。
天は二物を与えず。
なんて言われたりもするが、
ほとんどの人間は二物を得る。
基本的にこの世は遺伝子ゲーム、
人生の成功の8割は生まれ落ちた環境によって決まると言って良い。
頭が良い奴は顔が良く、
顔が良い奴は運動神経が良く、
運動神経が良い奴は頭が良い。
生まれ持った才能で地位を得た男は
容姿端麗な女性と結婚し、
容姿端麗で才能もある子供が生まれ、
またその子供が地位を築き…
この繰り返しが起こる限り、
天は二物を与え続ける。
これがこの世の掟であり、
避けては通れない運命である。
が、俺は違った。
遺伝子は時にエラーを起こす。
そして俺は間違いなくそのエラー側の人間だった。
生まれてまだ間もないころから、その片鱗は見えていた。
まず、自力で立ち上がるのが他と比べ圧倒的に遅い。
喋り始めるのも遅い。
首が座るのも遅い。
そして幼稚園に入っても、
他者とのコミュニケーションが取れないどころか、
平気で暴力は振るうし、
物は奪うし、
奇声はあげるし、
とにかく手の付けられないガキだった。
まあそんな小さい頃のエピソードなんてかわいい話で済む。
しかし、違和感は幼少期だけではとどまらなかった。
小学校に入っても、
他人の感情が全くと言っていいほど理解できなかった。
このあたりからは記憶にあるが、
周りから注意されることがなぜダメなのか?
どうして周りは嫌な気持ちになるのか?
をこれっぽっちも理解できない。
さらには、常時落ち着きがなく、
時間や場所に関する約束を一切守ることができない。
守ろうともしない。
少なからずADHDとサイコパス性を兼ね備えて生まれ、
さらには親から一切の才能を引き継ぐことなく
常に成績は学年最下位。
物分かりの悪い問題児として学生時代を過ごした。
1つ良かったことがあるとすれば、
両親共に教育熱心ではありつつも
家庭内暴力や子供への罵倒などは一切なかったため、
それらの影響を受けることなく大人になれたということ。
もし親が暴力・暴言当たり前の幼少期を過ごしていたとしたら
生まれ持ったサイコパス性、道徳観の欠如、コンプレックス、
そしてそこに荒れた家庭環境が加わり
間違いなく犯罪者の道を辿っていた自信がある。
その点は感謝しかない。
世間は「親ガチャ」という単語が共通認識となり、
親ガチャが外れたら人生詰む。
まるで自分が雑魚なのは親ガチャのせいだ。
といわんばかりの風潮だが、
まあそれは一理あるともいえる。
俺は遺伝子ガチャは外れだったが、
それも親ガチャ90点-遺伝子ガチャ30点というレベルの話。
親の才能を受け継げなくとも、
生まれ育った環境のおかげで最低限の道徳観やらマナーやらは身についた。
親ガチャ0点の人間の大半は遺伝子ガチャも10点未満になるため、
それに比べたら圧倒的に恵まれた人生と言えるだろう。
じゃあ親ガチャが外れた時点でもう無理なのか?
と言われると、実はそうとも言い切れない。
いや、そもそもそれを考えても意味がない。
恵まれた環境に生まれた俺がいっても
説得力に欠けるかもしれないが、
俺が現在最高月収1000万を超え
いわゆる準富裕層の域に足を踏み入れたのには
親ガチャはほとんど関係ないと言い切れる。
もちろん、親ガチャが当たりだったおかげで犯罪者にはならなかった。
が、親の教育は全て
・良い学歴
・良い就職先
のために行われたものであって、
それに関して言えば俺は一切の恩恵を受けていない。
とんでもなく頭が悪かったために
高3の1年間は全力で勉強したのにも関わらず大学はFラン、
そのFラン大学を卒業すらできなかったため
就職活動に辿り着かなかったどころか、
人生でほぼまともに労働することなくニートになった。
もし俺が一般家庭に生まれていたとしても
ここまでのルートに変わりはなかっただろう。
俺は親ガチャを単なる「成功確率」だと考えている。
親ガチャが当たりであれば、成功する確率は跳ね上がる。
実際、俺を除いた親族は全員当たり前のように成功を掴んでいる。
たとえば、従兄弟は東大卒業後某大手商社に就職、
従姉は幼少期からアメリカで育ち、
今では医者になり開業医の金持ち彼氏と結婚した。
他の親戚もまあみんな似たような感じだ。
俺も生まれながらに東大を期待されてきたし、
いや、東大が当たり前だという認識の中育てられてきたし、
そんな環境でFラン中退ニートになったのは先祖代々遡っても俺以外いないだろう。
金、才能、教育、
親ガチャが当たればそれらが生まれながらに備わっている確率が高く、
結果全ての物事において成功確率が跳ね上がる。
親ガチャは生まれながらに与えられた成功確率。
しかし、結局それは単なる確率に過ぎない。
それが何%であろうと、成功する奴は成功するし、失敗する奴は失敗する。
僕らがやるべきことはその%を気にすることではない。
パーセンテージを気にしていても意味がない。
パーセンテージを諦める理由にしてはならない。

これは有名予備校講師の林修先生がテレビで話していたものだが、
物事には「変数」と「定数」があり、
自分の力で変えられるもの、変えられないものが存在する。
たとえば、親ガチャに関しては間違いなく定数だろう。
どんな家に生まれ落ちるか、生まれ落ちたかなんて
自分では一切コントロールできない。
しかし、その後の大半の努力は「変数」にあたる。
良い大学に行くために勉強する。
良い企業に就職するために就活を頑張る。
良い給料を貰うために仕事を頑張る。
良い生活をするためにビジネスに取り組む。
それら全ての努力の量・質に関しては
間違いなく「変数」にあたる。
であるが故に、
持たざる者に生まれた人間は
その「変数」が大きいところで勝負しなければならない。
もし仮に、俺が今から力士になり横綱を目指すとする。
たくさん食べ、稽古を積み、もしかしたら力士デビューしてなんちゃら場所とやらに出場することができるかもしれない。
しかし、せいぜいそれが限界、
いやそれすらほぼ厳しいだろう。
俺は生まれながらに身体がデカいわけではない。
身長は175、体重は60。
どちらもほぼ平均、どちらかと言えば痩せ型。
運動神経も特別良いわけではない。
格闘技経験もゼロ。
これまでトレーニングなどの経験もない。
生まれながらの体格やこれまでの経験。
それらは「定数」であり、
変えることの出来ないもの。
今後いかに食べまくって稽古を積んだとしても横綱になれる確率が0%に近いのは、
「定数」が結果に与える影響が大きすぎるから。
「定数」の内容があまりにも結果を出すために足りていないから。
「定数」は変えることはできないもの。
なら、定数は気にせず「変数」に努力の全てを捧げるべき。
ここまでは合ってる。
でも、変数にいくら努力を捧げたところで
叶わない夢もある。
極端な話を続けるが、
おじいちゃんが死ぬ1日前に
「総理大臣になりたい」
と思っても、絶対に叶うことはない。
総理大臣になるため政治の勉強を開始することはできる。
どこかの選挙に立候補することもできるかもしれない。
でも、「これまでの経歴」は「定数」であり、
さらには「残された時間」も「定数」である。
それらが目標を達成するために足りていない時、
目標達成は「不可能」になってしまう。
では、20歳の若者が総理大臣を目指したら…?
5歳の子供が横綱を目指したら…?
お分かりの通り、成功確率は跳ね上がる。
若さとは可能性である。
若ければ若いほど「変数」の割合が大きくなり、
年を取れば取るほど変えられないもの、変わらない過去が蓄積していく。
若さ。過去。これまでの経験。
僕らが新たな夢を叶えるとするのなら、
それらの定数が極力影響しないところ、
つまりはまだ変数だらけのところで勝負するしかない。
俺は生まれながらに頭が悪かった。
そしてそれを放置したまま大学生になり、
そのままルートでは一生金持ちになれないことが確定した。
学歴は上書きすることもできなくはないが、
年齢という部分を加味すれば定数となる。
1から勉強して良い大学を目指し卒業するには時間がかかりすぎる。
Fラン大学中退という学歴が定数となっている以上、
就職、労働という世界で勝つことは難しい。
年収1000万といういわゆる「勝ち組」になることが不可能だとは言わない。
Fラン卒や高卒で出世する人もゼロじゃない。
でも、限りなく不可能に近い挑戦。
これまでの自分の怠慢が
自分の足を引っ張り続ける「定数」となっている。
だからこそ、俺は労働という場所での戦いを諦め、
戦うフィールドを変えた。
ビジネスという世界は、限りなく定数が少ない。
学歴や職歴が関係ない、
完全なる能力ゲーム。
結果を出すために必要なもののほとんどが変数であり、
この先の努力によっていくらでも可能性が広がっている。
俺は親ガチャの恩恵を受けることのないまま大人になってしまった。
学歴もなければ職歴もない、
そんな状態から出世レースに参戦したところで勝てるわけがない。
だからビジネスの世界を選んだ。
ビジネスの世界は限りなく平等に近い。
学び努力さえすれば、
それが結果へと直結する。
定数を気にしても仕方がない。
変数のでかい場所で戦え。
そして、若さ=変数のでかさ。
人生の中で一番若い「今」挑戦を始めろ。
0から成功を掴むにはそれしかない。
それ以外持たざる者に道はない。
親ガチャなんて言葉を言い訳にするな。
定数に縛られて自分の可能性を殺すな。
変数に向き合え。
変数のでかいところで全力で変数をぶち上げろ。
おわり。